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陸を越え、海を越え

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Hugo Eckener著 "Im Luftschiff über Länder und Meere"(続き)

世界周航(14)

この飛行によるストレスと疲労は限界を超えていた。このようなツェッペリン飛行では常に成就の催しがあり、それは目標達成の儀式であった。ニューヨークにおけるその祝宴が特に盛大なものになることは判っていた。この点に関しては誰もが、ニューヨーク市民にどれほどよく知られているか知っており、我々自身、以前にそれを経験していた。

シカゴとデトロイトの間に居るときから、ニューヨーク警察本部長ブローバー・ウォーレンから電報で、乗客と乗員にニューヨーク歓迎パレードの準備をしておくようにと要請して来ていた。そのプログラムについて、我々が到着するとすぐ、車でブロードウェイを市庁まで下り、ニューヨーク市長の「ジミー」ウォーカーの歓迎を受けることになるとアドバイスを受けた。

乗務員の疲労状態を考えて、その案には賛成しかねたし、そのパレードを翌日に延期することにも同意出来なかった。それで、乗務員は1年前に同様な歓迎を受けていることでもあるし、もう一度やる必要はないと返信した。だが、その返事は歓迎パレードは必要不可欠というものであった。それで了承せざるを得ず、パレードは挙行された。

この時の熱狂ぶりは2年前よりひときわ激しく、電話帳を千切った紙吹雪はそれまでの史上最大であったと思う。市庁舎では短い歓迎スピーチがあった。美しい声の女性がアメリカ国歌を歌い、ジミー・ウォーカーが冗談を交えてそのときの興奮した気持ちを述べた。

「紳士淑女の皆さん、私はいまエッケナー博士と同じことを感じています。空中を飛び続けているあいだ、ランドルフ・ハースト氏のことを考えていることを知りすぎるほど知っているので、このスピーチをするに相応しい人間であると思っています。」

誰もが、彼の言っていることの意味を知っていたので笑った。ウォーカー氏がニューヨーク市長への立候補を表明したとき、ハースト新聞社は非常に冷静で、彼の立候補に消極的で、ウォーカー氏をアメリカのスラングで「空中に漂っている」と表現していたのである。これはハースト新聞にとってあまり愉快なことではなかった。

私は過剰な「英雄的」という表現を抑えて、普通の人間の仕事として話してくれたことが嬉しかった。このようなニューヨーク市民が喜ぶ群衆の熱狂の中では過剰になりがちだからである。

しかし、ニューヨーク市民の熱狂は一般的にアメリカ人的であったと思う。私はそれを、翌日フーバー大統領がホワイトハウスに招待してくれたときに、改めてそう感じた。

彼の前に立っていた私に「昔、コロンブス、バスコ・ダ・ガマ、マゼランは大冒険を行った。いま、私の前にその冒険家がいる。エッケナー博士、私は嬉しい。アメリカ市民は熱烈にあなた方を歓迎し、私はここにあなたの事業を祝福します。」と述べた。

「世界一周飛行」は「前進と文明」の観点から非常に意義ある偉業として評価され、アメリカ人は「アメリカの」世界一周に要した時間が、サンフランシスコから東京までの海上航行に要する時間より短く、僅か12日であったことを喜んだ。

南米航路(1)

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