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陸を越え、海を越え

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Hugo Eckener著 "Im Luftschiff über Länder und Meere"(続き)

世界周航(13)

ちょうど良い高度で飛ぶと地形がよく見えるが、あまり高くなければ小さな町や村、それに広々とした郊外の興味深い細部をよく見ることが出来ない。一番良いのは飛行船で上空から眺めることであり、その大きな窓からあたりじゅうが自由に見渡せる。

私に関して言えば、カリフォルニアで最も南西の海岸から大陸を斜めに横切ってニューヨークまでの飛行は生涯でも最も印象的なものであった。

何という変化に富んだ素晴らしい眺め、アリゾナのたとえようもない浸食絶壁や砂漠、それに聳え立つロッキー山脈、中西部の農業地帯から東部の工業都市群など・・。一日でよくも飛行してきたと思うほどの計り知れない距離!

オクラホマで、カンザスシティで、デボンポートで、ロックアイランドで、何処でも行く先々が楽しみと驚きであり、我々の飛行船による世界一周飛行が如何に興奮をもたらすかがよく判った。

しかし、シカゴでは期待と夢を超越した体験をした。一年前、ニューヨークでグラーフ・ツェッペリンが到着したときに、1人のシカゴ市民が「もし、シカゴに来るようなことがあったらニューヨークなんかより凄い歓迎をしますよ!」と言っていた。私はそのアメリカ流の誇張した挨拶に笑って答えていた。

私は、かつて7百万人が心から歓迎してくれたニューヨーク市民の歓迎を、シカゴ市民が3百万人も上回ったこれほど凄い歓迎は想像できなかった。しかし、中西部人は、よりたくましくより野心的な気質を持っていた。

シカゴ人たちが我々の出現に示した騒々しい熱狂の表現は、決して書き換えられることのない記録となったことであろう。ミシガン湖畔の大きな広場には何十万という人がひしめき合い、その一人一人がサイレン、呼子、警笛、それに祝砲などを鳴り響かせていた。

ここまで40時間の飛行を続けて来ており、陽は没しようとしていた。サンフランシスコ上空のように、全てが黄金色に染まった夕陽を楽しんだ。そこから湖を渡ってデトロイトのフォード工場に行き、そこから更にエリー湖岸のクリーブランドに向かった。

真夜中過ぎにアメリカのグッドイヤー・ツェッペリン社の社長である友人リッチフィールド氏のいるアクロン上空に達した。

早朝、レークハーストに着陸し、「アメリカの」世界一周飛行は成功裏に完了したのである。

世界周航(14)

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