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飛行船と飛行船の旅

SLschiffe

Engberding著 "LUFTSCHIFF UND LUFTSCHIFFAHRT"

飛行船と飛行船の旅
その過去と現在、未来


第1章 飛行船

第1節 基本理論(1)

飛行船とはそもそも何なのか。このことを説明できる者はほとんどいないだろう。

一見月並みなこの問いにふさわしい模範的な答えを示すことは、たびたび繰り返される数々の基本的な誤解を回避するのに役立つ。そうすれば、完璧な定義が決してそう容易ではないと思うだろう。我々の目的には充分である説明の一つで満足することにしよう。それは次のようなものである。

「飛行船は原動機の動力で前進する船で、空中を遊泳する。」

水上船舶が水面上を進むと全く同じように飛行船は空中を進行する。浮かんでいる船体は、よく知られた物理的法則に従い、排除した流体の体積(ここでは空気の体積)と等しいだけ重量が減少し、その結果浮力を獲得する。そう考えれば、例えば球状の中空体を作り、それをポンプで真空にすると、飛行船が飛行中の浮力を可能な限り獲得するのに、理論的には最も効果的ということになる。

その後、球体をポンプで真空にするとその中の真空にされた容積と同量の外気が排出されることになる。それ故排除された空気と同じ量の質量を失い、言い換えれば浮力を得る。

おそらく素人には理解することが難しいかもしれないが、飛行船航行の基本となる理論を紹介しよう。薄い鋼板で1000立方mの空気の入った中空の球を作るとする。鋼板の重さは1000kgであると仮定する。中空の球には1000立方mの空気が入っている。乾燥した摂氏0度の空気は気圧計の示度が水銀柱760mmであるとすると封入された1000立方mは、1立方mあたり1.293kgなので全部で1293kgである。

いま、この球を大きな天秤の秤皿に載せ、もう一方の秤皿には天秤が平衡になるように錘を載せ、そこで球をポンプで真空に引く。すなわち球中の重さ1293kgである1000立方mの空気を排出する。球は軽くなる。つまり質量を失い、1293kgの浮力を得る。

このことは秤皿が振れることから確認できる。再び平衡状態に戻すには、もう一つの秤皿から1293kgの重量を取り去らねばならない。こうして我々は一つの実験によって浮力を直接測定したことになる。

ここに球の自重、すなわち我々が例で取りあげた鋼壁が1000kgであったとし、他方それが1293kg軽くなったとすると1293-1000=293kgの浮力が残る。球はこの力で上昇しようとし、その際になお293kgの許容載荷量とともに上昇することが出来る。これで理論的な飛行船は出来上がりだ!

実際には発明家がしばしば苦労させられるアイデアは、そんな真空に吸引された船体はあり得ないほど堅く作らねばならないので、外圧がすぐに平面を維持できなくなるように押しつぶすため残念ながら実現することが出来ない。その構造重量は実現できる最大真空がもたらす浮力の何倍にもなる。

従って別の道をたどり技巧を駆使せねばならない。中空体の内部を、空気よりも軽いある種の気体、例えば水素で充たす。これまで球を例に挙げて説明してきた真空容器の重量に加えられた水素の量が構造全体の総重量を増加させ、その一方で自由な浮力が減少する。1立方mの純水素の比重は空気を1とした場合、0.09となり、前例と同じ環境条件のもとでは1000立方mで90kgが上乗せされることになる。

従って得られる自由浮力は、この例では293-90=203kgに低下する。中空体の壁それ自体は1000kgの重量を用いることによって、おそらく容易に構築出来るであろう。というのも、それは真空の莫大な圧縮応力に耐える必要はもはやなく、とりわけ気密に作られさえすればよいからである。外気圧と内部のガス圧が均衡する。これで問題は解決である!

もう一度手短に要約する。1立方mの真空は1.293kgの浮力を生じる。1立方mの水素では1.293-0.09=1.203kg、つまり真空状態における理論上最大量の93%の浮力を得る。現実的にはこの数値は低くなる。ガスは空気との拡散による混合などによりある程度の不純性は不可避だからである。平均の固有比重を計算してみよう。水素の不純量が0.1あるとすると、その場合1立方m0.129kgとなり、浮力は1立方mあたり1.293-0.129=1.164kgで、つまり真空の浮力の90%になる。

別の軽量ガス、比重0.137のヘリウムを充填すると理論的浮力は1立方mが1.11kgだから、純粋な水素を充填するときよりも約9%減少する。

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