ツェッペリン飛行船は、ボーデン湖畔の町フリードリッヒスハーフェンにあるツェッペリン飛行船製造社で、部分的な改良を重ねつつ、基本的には同じ設計で連続的に建造されてきた。
フレーム構造のガーダー(桁)に金属ジュラルミンを用いた硬式飛行船で、流線型の船体は多角形のメインフレームまたは主リング(同義語である)を放射状に鋼索で中心から多角形のコーナーまで張り、それが相互に長さ方向のガーダーに船首から船尾まで連結されている。
船体底部には長手方向に3本の縦通材を組み合わせてV字形のキール(竜骨)が構成され、横方向にはメインフレームにしっかり支持されている。重い荷重はここに集中し、また乗組員はこの通路を使って船内各部に行くことが出来る。
メインフレームは15m間隔で配置され、メインフレームの間にはゼラチンラテックスの繊維で作られ(1930年代に、これが採用される前にはゴールドビーターズスキンであった)、ガス密の内張が施されたガス嚢が設置されている。
メインフレームの間には2本の補強のない中間フレームがあり、軽量の縦通材でメインフレームと接続され、外被を支持している。
外被は軽量の綿布で出来ており、張りを持たせることと防水のためドープを塗り、空気抵抗を減らすために表面は磨かれている。
安定板と舵板は船尾に設けられており、エンジンは船体の下に小さなゴンドラに納めて吊り下げられている。
初期の旅客用ツェッペリンでは乗客を、運転用ゴンドラのうしろに設けられた長い外部ゴンドラに乗せていたが、ヒンデンブルクでは広い乗客区画が船体内部に造られていた。
硬式飛行船は、基本的に動力附きの気球であり、排除した空気の重量からガスの重量を差し引いたものに等しい力で空中に浮かんでいる。
当時ドイツでは、水銀柱760mm、相対湿度60%、ガス温、気温が0℃の標準大気環境で、比重 0.1の水素1立方mで 1.16kg(1000立方フィートあたり72ポンド)の浮力が生じるとされていた。
この基準によると、ガス容量 20,000立方m(7,062,150立方フィート)のヒンデンブルクは 242.2トンの総浮力を生じる。
それは、この飛行船がそれだけの荷重を持ち上げると言うことではない。固定重量を差し引かねばならない。構造のデッドウェイト、船体構造のガーダーや張線、ガス嚢、外被、ゴンドラ、エンジン、燃料系、乗組員・乗客用設備、その他 船体から取り外せない構造物などである。
ヒンデンブルクでは、これら固定重量は 130.1トンである。
総浮力 242.2トンから軽荷重量 130.1トンを差し引いた 112.1トンが有効浮力となる。
これは飛行船を運航する者にとって、飛行船に何を搭載するかを選択する判断基準になる。 長い航行の場合、この有効浮力を燃料に割り当てることは当然である。
大西洋横断飛行の場合、ヒンデンブルクは 64トンのディーゼル油と 3.3トンの潤滑油、20.7トンのバラスト水、備品、スペアパーツ、50人の乗組員、所持品と4日半分の糧食、50人の乗客とその手荷物、2.8トンの糧食および 12.7トンの貨物と郵便物である。
これは、数ヶ所に途中着水しながら乗客を乗せた飛行艇が大西洋を飛行した3年前のことである。
標準状態での浮力は 気温、気圧、相対湿度の変化で変動する。さらに、ガス嚢に空気が浸透して水素の純度が落ちるとガスの重量が増し、飛行船の浮力が減少する。
気温が高いか、気圧が低いと飛行船によって排除された空気の重量が減り、飛行船の浮力が少なくなり、逆に気温が低いか気圧が高いと浮力は増大する。
湿度は相対的に影響が少ないが、湿度が高いと幾分浮力は減少する。
その上、ガス温は相対的に浮力に相当な影響を与える。
(通常は太陽光線で)過熱されたガスはそうでない場合より密度が下がり浮力は増加するし、(深夜で)過冷状態のガスは逆な影響を与える。
離陸の際と、満載状態で飛行船は「ウェイオフ」され、平衡状態に保ち、まれに僅かな(2~300kg)「予備浮力」が与えられる。
ガス嚢は離陸の際には常に100%か、それに近い状態である。
燃料を消費することによって飛行船は軽くなり、圧力高度(上昇限度)が増加する。
上昇に伴い気圧が下がって水素が膨張すると、決められた相対圧力でバネで閉じられていた自動弁が開いて、圧力が均衡するまでガスを「噴出」させる。
もし、ガスの漏洩や 雨、雪、霰などの重みで飛行船が重くなると、指令はさらにバラスト水を放出する。
飛行の終わりに燃料を消費したり、ガスが太陽で過熱されたりして、その飛行船が軽ければ指令は特定のガス嚢から手動弁で水素を排出することも出来る。
通常、重い飛行船は上空で船首上げで飛び、正の動的浮力を発生させるが、場合によっては飛行船が軽いときにガスを保持するために船首下げで負の動的揚力を発生させることがある。
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