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ツェッペリンNT乗船記

Meersburg

ボーデン湖西コース(3)

ユーバーリンガーゼーを渡ると葡萄畑のなかにビルナウ巡礼教会が建っていた。白で縁取られた淡いピンクの小さな教会である。ガイドブックによれば屋内には有名な智天使のフレスコ画が描かれているということで、この日も朝の9時半から境内に10人程度の人が見えた。

そのすぐ近くにプファールバオ(杭上家屋)博物館がある。ボーデン湖には先史時代の杭上家屋の集落が幾つも発見されているという。ここはその一つで連絡船の時刻表にも案内が載っていた。この施設に隣接して立派な繋船堀があり、100隻を越えるモーターボートが繋いであった。

プファールバオ博物館のあるウンターウールディンゲンから湖岸沿いに戻ると、初めて見るのに何だか懐かしい景色が眼の下に広がってきた。メーアスブルクの街である。2日前にコンスタンツからフェリーに乗って街の西端に設けられたフェリー乗り場で上陸し、木陰の駐車場に車を置いて坂道を登ってマルクト広場に行ったのである。

内部を見学した旧城も、テラスで食事をした新城も箱庭のように見える。ちょうど2日前訪れたときと同じくらいの時間帯である。観光客もちらほら見える。「グラーフ・ツェッペリン」の絵はがきにも旧城を前景に入れたものがあるが、その頃と殆ど変わっていないかのような静かな街である。ガイドブックには人口5千5百と紹介されていた。

7世紀に建てられた旧城(Altes Schloss)は当時のままの城内が見学できる。18世紀に建てられた新城(Neues Schloss)の内部は博物館になっていて、2階には有名な飛行艇を開発したクラウディウス・ドルニエの博物館もある。旧城の傍にはウーバン氏のコレクションを展示したツェッペリン博物館があり、このほか州立ワイナリーも有名である。

コンスタンツやフリードリッヒスハーフェン、それにユーバーリンゲンと連絡船が結んでいるので昔からある東側の港のほかに、西にもフェリーターミナルが設けられ、歩いて街を散策する人のために木立の中に駐車場が整備されている。南向きの斜面は一面の葡萄畑である。

我々の乗っているこの飛行船はツェッペリンNT07型の3号機で登録符字は「D-LZZF」である。初号機は「フリードリッヒスハーフェン(D-LZFN)」であったが、2005年から南アフリカでダイアモンド探査に当たっていた。超精密な探査機器は飛行機やヘリコプターでは振動のため運用不能だそうで、飛行船の特性を活かした用途である。カナダでもダイアモンドを含む鉱物資源の探査が検討されているというが、アフリカで稼働中であった飛行船はスケジュールに余裕がなく、飛行船の新造には1年以上の納期を要するということである。

2号機は「ボーデンゼー(D-LZZR)」としてDZRが遊覧飛行に用いていたが、2003年に日本飛行船(株)が購入し「JA101Z」となったことはよく知られている。2007年5月31日に国土交通省航空局から航空運送事業許可を取得し、同年11月23日から遊覧飛行を始めた。しかし、残念なことに同社は2010年5月末で倒産し、飛行船は解体されてしまった。

ツェッペリン飛行船技術社はツェッペリンNT型飛行船を、小型のNT07(14人乗り)、中型のNT11(18人乗り)、大型のNT30(40人乗り)のシリーズ計画として発表したが、実際に建造したのは4隻のNT07型のみである。

2007年9月に南アフリカでダイアモンド探査に当たっていた1隻目が繋留中に竜巻に襲われて全損となり、2008年7月に4隻目が竣工してイギリスに渡ったのでドイツ、日本、イギリスに居る3隻が現有総数である。

飛行船はボーデン湖の北岸に沿って東に戻り始めた。この湖岸にはドライブに快適な道路が走っているが、フリードリッヒスハーフェン近郊のマンツェル辺りから鉄道が併走している。マンツェルはツェッペリン伯爵が硬式飛行船第一号を浮揚させた縁の地である。

ボーデン湖西コース(4)

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