LZ127Profile

「グラーフ・ツェッペリン」で世界周航

MG81

第二、第三区間

太平洋上航行

霧の中の40時間

この40時間、特にエキサイティングなことも危険なこともなかったと言っても信じがたいであろう。単調そのものであった。
郵便物が積み込まれていた。この航行でも、いつもの航行のように多数の葉書や挨拶状を搭載していた。

飛行船は、綿のような雲に取り囲まれて揺れもなく航行していた。汽船であれば、必死になって汽笛を鳴らし続けなければならないところである。我々は空中にいるので、いかなる衝突も心配する必要はなかった。
ときおり日光によって霧が裂かれた。そんなときは光と風の具合で、不思議な形の雲が現れた。
雲は、まるで下船を促すかのような、飛行船のそばに実に細やかな織物の橋や道を形作った。

青い谷と水の流れ、ベンチや椅子の置かれた大理石の丘がすばやく、また細やかな形で現れた。
強い突風が吹き込むと、それらは一瞬のうちに消えてなくなり、ずっと下に海の青い背が見えた。

あまり多くの乗客が操縦ゴンドラに立ち入らないように注意深く見張っていた飛行船の「監視員」フレミング船長は、航行中に飛行船が10ポンド軽くなれば良いと思っていたが、ブリッジのベンチの上に大きなメロンがあるのを見た。

私は、彼がそれをデッキの上に高く弓なりに投げるのかと思ったそのとき、すでに彼は悪魔のような笑みを浮かべて実行に移していた。
緑色のものが飛行船に向かって幾つも斜めに飛んできた。あるときは海霧のなかに姿を消し、あるときはちぎれ雲の幹や枝を滑るように飛んでいった。あるときは、ただの大きなリンゴのように見えた。ついには、その実は水の上ではじけ、重みで粥のようにばらばら落ちていった。

静かな海に頭から飛び込むことができると数分前まで思っていた一人の乗客が、吃驚して頭を抱えた。水面はとても近く見えたのだ。メロンは300メートルを落下して行った。

霧のなかの飛行が終わると、何度か暴風雨に見舞われた。しかしツェッペリンはそのなかを進んだ。ひどい暴風が10分程度まわりから吹き付けた。机は揺れ、グラスや皿が落ちた。しかし、そのひどい状態に立ち向かい、何とかやり過ごすことができた。それは本当に面白かった。しかしそれを不快だったと言うのはナンセンスである。むしろ滑稽で楽しかった。それに、その状態が続いたのはほんの短い時間であった。

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