すべてが白かった。粗絹糸をつかった大きなスーツの背中に汗のしみが滲んだ。
庭園での気分転換。何百人もの人たちの声が響いた。我々を歓迎するために在住のドイツ人が集められていた。そのメンバーたちにとって、この飛行は何を意味していたのだろう!
静かに、興奮した声で彼らは繰り返し語った。我々の飛行船の銀色の先端が遠くに小さく、魔法のように空中に姿を見せたとき、小さな、興奮した声で・・・
それはドイツの故郷からの、生き生きとした目に見える挨拶であった。
それはドイツ人の功績への誇りであり、初の長距離飛行によって未来の交通機関であることを実証したツェッペリンへの誇りであった。
だからこそ、暑さと祝宴の大混雑にもかかわらず、ここドイツ大使館の庭園で在留ドイツ人と我々は至福の時をともにすることが出来たのである。
この人たちは強く団結していた。当地のドイツ人は、ほかの外国のドイツ人居住民とは対照的に、極めて現代的な考えを持っていた。
ここには、政治的な不満を口にするものは殆どいなかった。私は、そこには最も善良なドイツ人が派遣されているのだと思った。私はこの日、午後のあいだずっと、霞ヶ浦への着陸のことを思い出さずにはいられなかった。
50人あまりの人がびしょ濡れになった。
なかでも多くの水をかぶった女性が笑い、泣きながら叫んだ。
「故郷からの水よ。ボーデン湖の水なのよ!」
そのとき、ツェッペリンは重量を軽減させねばならず、大きな栓を抜いて200リットルもの水をバラスト容器から飛行場に放出したのである。