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「グラーフ・ツェッペリン」で世界周航

Enchi_1

第一区間

彼は理解できなかった・・

これからは日本が楽しみだ。ヤクーツクを過ぎても、これまでと同じ水と沼沢の眺めが続いた。
2、3の農家、広くめぐらされた垣根と粘土の四角い平らな家、毛のぼうぼうになった家畜、あちこちの小さな耕地に農夫のいるのが見えた。
空は突然、磨いた鋼のように青くなり、空気は澄み、穏やかな暖かさになった。
我々はスタノヴォイ山脈に近づいた。無線連絡は長い間取っていなかった。やっと日本の無線局が最初の通信を伝送してきた。それによると、大きな台風の低気圧の先端が沿岸に接近しつつあるということであった。
我々はそれを背後から受け、その風に押されるかどうか様子を見る必要があった。

日本のジャーナリスト、圓地博士が無線室からぼさぼさの頭でやってきた。
彼の手に、発信されなかった6通の電報を持っていた。
彼は、報道用電報を受け持つ以外に、無線士に別の業務があるということを全く理解することが出来なかった。それまでに発信された30通の電報に加え、さらに6通を発信できると彼は思っていたのである。

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