LZ127Profile

「グラーフ・ツェッペリン」で世界周航

Wilkins_1

第一区間

ウィルキンスの潜航艇

夜は物凄く寒かった。そして8月18日の朝が来た。
私は腰をかがめて冬用コートと厚手の赤いセーターを着、その両方を身につけて、完全に防寒した人達の集まっているサロンに出向いた。
ヘイ女史は、裏のついた厚い毛皮を着て、自動車レース用の飛行帽のような帽子を被っていた。ヒューバート・ウィルキンス氏は、薄黄色の駱駝のコートを着ていた。
足にはフェルトを穿き、半ズボンのところまでウール厚手のソックスを履いていた。至るところ、ウールのジャケットと帽子だらけであった。

ある者は、2枚のコートを重ね着して、しかもチロル出身の男は革の半ズボンを脱ぎ、通常の人のような外観を呈していた。しかし、我々仲間のフランス人はベッドに身を隠し、その上から手に入るすべてのものを掛けていた。
ヒューバート・ウィルキンスは、北極に近づいて興奮し、潜航艇で極地の海面下を航行し、それから極地に浮上するという自らの計画をまだ断念していないと話した。
彼は、それがまるで子供の遊びででもあるかのように、とても淡々と落ち着いて語った。

そもそも彼は風変わりな人物で、外見上の礼儀正しさと慎みの雰囲気を漂わせていた。彼はオーストラリアの大きなキリスト教の宗派で、教義と教会にはあまり関係のない、本物のすばらしい信仰を持っていた。
彼は運命を信じ、危険が差し迫っているかどうかを振り返ることもなく、与えられた人生行路を歩んでいた。しかし、彼は飛行機で北極の陸地と氷原上空を飛び、何十回も不時着したが、一度も怪我をすることはなかった。ただ一度、彼は舵輪で下腹部を打って「腹を少しねじった」ことがある。

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