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コラム:船長と指令(司令)

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日本語で船長という言葉は、個人の資格を意味する場合と、その船の航海における最高責任者という意味があり、読むときに注意しなくてはならない。

英語の "captain"、ドイツ語の "Kapitän" も両方の意味に使われることもあるが、運航されている艦船の最高責任者には、それぞれ "commodore"、"Führer" という別の呼称がある。

商船でもイギリスの "Queen Elizabeth" のような大型客船の場合は "captain" の上に "commodore" がおり、アメリカ船などでは "captain"、"vice-captain" "deputy captain"、 と3人も船長が乗っていることがある。

船舶数の減ったときは、船長の資格を持っていても一等航海士の配置で乗船するなどましな方で、その運航会社の荷主にあたる製鉄所の原料倉庫課長から船長の名刺を差し出されたときは戸惑ったものである。

こと飛行船に関して、ドイツでは "Kapitän" をその人物の資格(階級・肩書)として用い、"Führer" という称号はその飛行船の運航責任者として使い分けていたようである。

ツェッペリン飛行船には Kapitän は沢山居たが、第一次大戦「LZ-120」以降、本格的旅客用飛行船の "Führer" は フーゴー・エッケナー博士、エルンスト・アウグスト・レーマン船長、H.C.フレミング船長、ハンス・フォン・シラー船長、ヴィッテマン船長、プルス船長、ザムト船長の7名である。

水上船舶と違って浮揚している飛行船では、微妙な傾斜など本船の状態や、気温・湿度・気圧・気流などを常に監視しておく必要があるので、当直船長とも言うべき当直士官という配置があった。
当直士官には船長資格が必要であり、指令になるためにはこの配置で経験を積んで認定試験に合格する必要があった。
ガス嚢主任、方向舵手、昇降舵手、航海士と経験を重ねて飛行船長の資格を取得するというキャリアが一般的であったのであろう。

個人に呼びかける敬称としては "Kapitän" が一般的であったが、ツェッペリン飛行船の運航部長でもあった Hugo Eckener 博士に対しては "Kapitän" ではなく、尊敬の念をこめて "Doktor" と呼びかけていた。

ちなみに Dr. Hugo Eckener は工学博士や理学博士ではなく、哲学と国家経済学の博士であった。

なお、司令という日本語は主に軍事部門の指揮官に使われるが、消防吏員の階級に司令長、司令、司令補がある。このため、飛行船に関する記述では軍用飛行船の場合に司令を用い、旅客用飛行船では指令の文字を用いている。

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