LZ127Profile

ツェッペリンNT乗船記

Abflug

ボーデン湖西コース(1)

ツェッペリンNTのゴンドラは外から見たよりずっと広かった。ゴンドラの長さは操縦席を含めて約10m、幅は2.3m程度で中心線に人がすれ違えるゆったりとした通路があり、両側に6人ずつの客席がある。一番前の席は正副操縦席と背中合わせなので後ろ向きになっており、そのほかはすべて前向きである。ゴンドラの最後端は1枚の曲面窓でパノラマウィンドウである。乗降口は左舷後方で非常口は右舷前方に設けてあり、乗降口の前にトイレがあるほかには特に目立つものはない。

あっけないほど簡単に離陸した。何の前触れもなく僅かな衝撃も感じることもなく、窓のすぐ傍に立っていた地上誘導員が大地とともに下がってゆく感じであった。発着場で2~300mも昇ったと思ったら、コパイ席に座っていたキャビンアテンダントが客室に来て、シートベルトを外して歩き回って良いという。ライカミングエンジンは快調に作動しているが騒音は気にならない。通常の会話が出来る。それより、離陸の際、地表に騒音や排気や砂塵を巻き上げる吹き下ろしのないのが何よりである。

地表に落ちた大きな影が見る見る小さくなる。パイロットが左右のスラスタ機能確認のためか、僅かにヒールしたように感じたがすぐに戻っていた。ツェッペリン飛行船技術社の格納庫と通りを挟んで向かい側のフリードリッヒスハーフェン・メッセの大きな展示場が眼の下に並んでいる。発着場に隣接している空港の滑走路や駐機している小型機が玩具のようである。

上空をゆっくりひとまわりすると市街地の西郊にむかって南西に進んだ。シュタットプランで見たツェッペリンドルフも、エッケナー博士やドルニエ博士たちの眠る市営墓地もよく見える。やがてフリードリッヒスハーフェンのランドマークであるシュロスキルヒェを左舷に見ながらボーデン湖岸に近づいて行く。家や立木は鉄道模型マニアの作ったレイアウトのようである。この辺りは殆ど葡萄畑で、十字路の周りに何軒か集落をなしている。

やがて飛行船は、ツェッペリン伯爵が硬式飛行船第1号の「LZ1」を建造して浮揚させたマンツェルの集落にやって来た。非常に柔構造であったため、僅かな衝撃で破損するおそれがあったので水上格納庫による湖面からの発着を考えたのであろう。市営のツェッペリン博物館で見ると、フリードリッヒスハーフェンにはレーヴェンタール、マンツェルなど3箇所に飛行船発着場が設営されていたようである。

現在、DZRが運航している遊覧飛行にはボーデン湖上空30分飛行から、ボーデン湖西ルート、同東ルート、ラインの滝シャフハウゼンまで往復する2時間飛行まであり、誕生日や記念日などは特別料金も設定されているらしい。

我々の乗ったこの日最初のフライトは最もポピュラーなボーデン湖西ルートで、コンスタンツ、マイナウ島、メーアスブルクなどを巡る1時間コースである。

やがて飛行船はインメンシュタットの町はずれに来た。オートキャンプ場には優に百台を越えるキャンピングカーが駐車し、船溜まりにはヨットやモーターボートが所狭しと繋留されていた。

ここ、ドイツでは屋外のスポーツが盛んで、サッカークラブなどには小学生クラスからチームがあるが、個人でスポーツを楽しむ人も多い。家族でサイクリングを楽しんでいる人はよく見かけたし、車道でも歩道でもない自転車専用道も整備されている。そのほか乗馬、カヌー、グライダー、熱気球なども各地で楽しめる。

ボーデン湖西コース(2)

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